吉竹めぐみ

15歳の時に出会ったT・E・ロレンス(通称アラビアのロレンス)に心を奪われた。 同時に、沙漠に憧れアラブ世界に魅せられた。 1987年に初めてシリアを訪れ、95からは毎年シリア沙漠でベドウィンの一家と共に暮らしている。ベドウィンとの14年に及ぶ撮影は日本人唯一であり、世界的にも稀である。 『ベドウィン』(アラビア語で「バーディーヤ(荒地)に住む人達」の意味)は一般的にはアラブ系遊牧民を指す。多くがアラビア語を母語とし、イスラム教徒である。 羊・ヤギ・ラクダなどの家畜を飼育しながら遊牧生活をしており、父系の血縁関係を重視する部族主義である。 「沙漠は日本にあるのか?」とよく聞かれた。 「ない」と答えると「それは良くない。沙漠は清潔で、ここにはすべてがある。」と誇らしげに言い切る。 彼らは決して沙漠を出ようとしない。 町での便利な生活を手に入れる事も出来るのに、沙漠にこだわり、沙漠を愛する。 私達はお金と便利な物達を手に入れ、繁栄の坂を登り続けているのに、物に縛られ、物に使われている。彼らにとって生活の豊かさの基準が違うのだ。豊かさは物ではなく心の中にあると思う。